細菌性食中毒
人間の皮膚、鼻や喉の粘膜に見られるブドウ球菌は、通常、誰もが保有しています。この菌によって傷口が化膿したりしますが、種類としてはいくつかあります。一番毒性が高いと言われているのは、黄色ブドウ球菌で、ブドウ球菌由来の中毒の多くはこれに起因します。個人差があるものの、症状としては腹痛や下痢、嘔吐、吐き気などとなります。毒素はエンテロトキシンと呼ばれているもので、当該菌が作り出す物質です。生存できる環境も幅広く、アルカリ性や酸性に耐性があり、塩分の強い領域でも繁殖可能です。また、十度から四十五度の温度で成長ができます。現在、国の規定する殺菌条件下では、すべて死滅するため、当該菌による直接的な細菌性食中毒の心配はありませんが、この菌が生成する毒素は高温下でもなかなか消滅しません。このため、牛乳などを商品化する過程で、当該菌が一旦毒素を生成してしまうと、後に熱を加えて殺菌の措置を講じても食中毒は引き起こされる可能性があります。
リステリア菌は人畜同様の病原菌であり、土壌になど自然界に多く見られます。日本ではこの菌による牛乳の食中毒は知られていませんが、海外では死亡した症例があります。病原性を有する菌はリステリア・モノサイトゲネスという種類であり、髄膜脳炎や胎児敗血症、肺炎、膿瘍、尿道炎、髄膜炎、結膜炎、習慣性流産、心内膜炎といった症状を訴えます。
セレウス菌も土壌に広く分布している菌ですが、いくつか種類があります。毒素を持っている菌は限定されているため、あまり中毒を引き起こしません。症状を分類した場合、嘔吐タイプと下痢タイプがあり、前者は増殖が食物内で行われるものです。後者は人間の腸内で増殖するものです。ただ、日本では乳製品に関するセレウス菌中毒は知られていません。