川魚(淡水魚)と海水魚の生食に関する疑問

川魚といえば、アユやイワナ、ウグイ、ウナギ、オイカワ、カジカ、コイ、サクラマス、スズキ、ドジョウ、ナマズ、ニジマス、ハヤ、フナ、ブラックバス、マス、ヤマメ、ワカサギなどがある。これらはいずれも食用だ。この内、ナマズやコイなどは、その生涯を淡水中で過ごす「純淡水魚」となる。アユやウナギなどは「通し回遊魚」と言われ、海水中で生涯の一時期を過ごすタイプだ。また「周縁性淡水魚」はスズキやボラ、マハゼ、クロダイ、シマイサキなどで、こちらは淡水と海水が混じり合う汽水魚(きすいぎょ)であり、もともとは海水魚である。 ところで、川魚は生食に適さないと言われるが、これは寄生虫によって悪さをされるためだ。では、海水魚はどうなのだろうか。もちろんサバなどを介して人体へ侵入するアニサキスといった悪質な寄生虫が知られている。本来アニサキスの最終宿主はクジラやイルカなどであり人間ではない。最終宿主であれば、あまり大きな悪さをしない。これは最終宿主に悪さをしたら寄生虫自身にそれが返ってきて、自分が生存できなくなってしまうからだ。長い進化の過程で、最終宿主にあまり悪さをしないようよう適応したのだろう。しかし、最終宿主でない人間の体に侵入すると問題になる。アニサキスは人間の体内では成虫になることができず、産卵もできないからだ。そのため、時として人間の細胞や組織を破壊しながら動き回る可能性もある。ただし、消化管壁を貫通することは稀だが、貫通すれば穿孔性腹膜炎や寄生虫性肉芽腫などを招くことがある。症状としては下痢を認めないところが、通常の食中毒と違う点となる。また、食後しばらくして腹部の激痛とともに嘔吐を引き起こす。 一方、川魚はどうだろう。代表例で言えばアユに寄生する横川吸虫(よこがわきゅうちゅう)が知られている。最終宿主は人間や犬猫、ネズミ、豚など淡水魚を食料とする哺乳類と鳥類だ。人間の体の中へ侵入すると最終宿主に寄生することになるので成虫へと育つ。腸管に寄生されるが、その数が少なければほとんど自覚症状がない。しかし、数が多くなってくると下痢や血便といった自覚症状を示す。この横川吸虫はコイやフナ、ウグイ、オイカワなどにも寄生することで知られている。 また、肝吸虫(かんきゅうちゅう)という寄生虫も有名だ。こちらの最終宿主も人間を含む多くの哺乳類だ。人間の体内へ侵入すると最終宿主のため、成虫になる。胆管や胆嚢に寄生するが、こちらもその数が多くなってくると下痢や貧血といった自覚症状を示す。放置すれば肝硬変などを招く可能性もある。しかし数が少なければ症状は出ないだろう。 川魚で問題となるのは、有棘顎口虫(ゆうきょくがっこうちゅう)などだ。この寄生虫の最終宿主は犬や猫、豚などの哺乳類であって、人間ではない。川魚の第二中間宿主を介して人間の体内へ侵入すると、これが問題になる。最終宿主に寄生できないため、幼虫の状態で人間の皮下組織を動き回ることもあるからだ。そうなると、皮膚が腫れあがったり痒みを伴うといった自覚症状が現れる。可能性として脳や眼球まで移動してしまうことも考えられるので、ひいては脳炎や失明に至るといった重篤な問題となる。 結論を言えば、海水魚より川魚のほうが寄生虫などの悪さを受けやすいということだろう。例え悪質な寄生虫が人間の体内へ侵入したとしてもそのまま排泄されてしまうこともあるだろうし、また必ずしも川魚に危険な寄生虫が取りついてる訳ではない。要するに、場合によっては命に関わることがあるという点が問題なのだと考えられる。例えば、横川吸虫や肝吸虫は本来の最終宿主が人間であるため、これら寄生虫の異常な増殖といった条件などが加わらなければ、それほど重篤な症状を招くとは考えにくい。問題なのは、最終宿主が人間でない顎口虫などということだ。川魚が危険とする一般論の根拠は、万が一を考えれば、川魚の生食は薦められないということになるのかも知れない。 ちなみに、アニサキスは加熱だけでなく冷凍でも死滅させることが可能だ。この場合、-20℃以下で24時間以上冷凍となるが、これは寄生の可能性のあるものに対して厚生労働省が指導しているためだ。また、北海道の郷土料理でルイベというものがあるが、この料理だとアニサキスなどの寄生虫を死滅させることが出来ると言われている。ただし、一般に使われるワサビや生姜といった薬味の殺菌効果程度ではアニサキスを死滅させることはできない。