冷蔵庫の中で保存するとエチレンガスを充満させるリンゴ

リンゴといえばアダムとイヴで有名な禁断の果実で知られる。また、アイザック・ニュートンの万有引力の法則が、落下するリンゴから発案されたというエピソードも有名だ。万有引力の法則といえば全ての物体は相互に引力を及ぼしあう概念のことだが、この記事ではあまり関係ないので割愛する。そんなリンゴだが、冷蔵庫の中で置いておくには、知っておいて得なことがある。 というのは、エチレンガスというものを発生させるからだ。これは植物ホルモンの一種であり、植物の生長と花芽形成を促進する性質があると考えられている。同時に特定の植物に対してはその花芽形成を邪魔する働きがあるとされる、ちょっと変わった気体の物質だ。またエチレンは、植物が組織の損傷を受けた際にも作られ、それに起因して抗菌作用を有するタンパク質が誘導される。これは植物の持つ防御システムの一つと考えられており、エチレンが気体であることから自分以外の周りの植物へも作用すると言われている。また、植物同士の接触刺激はエチレン生成を促進させると考えられている。 エチレンガスが植物の生長と老化、花芽形成を促進することは先に述べた。この物質を多く放つ植物ではリンゴやチェリモヤ、パッションフルーツなどが知られている。実は、これらの果物などと他の植物を一緒に保存すると大変なことになる。というのは、エチレンによって腐食させられてしまうからだ。しかし、多くの植物が腐食させられていく中で、成熟という過程を踏めるものもある。例えば未熟なバナナやキウイフルーツなどだ。固くてとても食べられるような状態にない未熟な果物を早熟させて食べ頃にさせてくれる。つまり、エチレンガスの存在は、悪いことばかりではないということになる。 一方、エチレンガスには植物の花芽形成を抑えたり伸長(生長)抑制作用があることも先に述べたが、ではどんな植物が生長の阻害をされるのだろうか。それは例えばジャガイモだ。長期間放置してたら発芽してるジャガイモを見たことのある人は多いのではなかろうか。このジャガイモ、リンゴと一緒に袋詰めにされると発芽が抑えられてしまうのだ。ただし、袋詰めにされるとジャガイモ自体の呼吸がままならず、更にエチレン濃度の調整など別の問題が出てくることも考えられるので、保存品質の向上に関してまだ明確になっていないようだ。その他、モヤシなどと一緒に生長させると太いモヤシを形成する。これは大豆やアズキなども含まれるが、やはりエチレン濃度が適切でないと良好な品質を形成できないようだ。 ということでエチレンガスは、成熟や開花、落ち葉、老化といった植物の一生に関わってくるホルモンの一種である。同時に萌芽形成や伸長の抑制作用をも持つ少し変わった物質と言える。若干矛盾するようにも思える関係だが、何故このような関係が生まれるのかは分かっていないようだ。 結論としてリンゴを冷蔵庫で保管する場合、そのまま入れてはいけないということになる。気体で存在するエチレンガスはそのままだと多くの場合、周りの食物を巻き込んで腐食させてしまうからだ。リンゴのみの場合、ポリ袋などを使ってリンゴ単体で密封してしまうのが得策だろう。とはいえ、バナナなどはポリ袋へリンゴと一緒に入れてしまえば、熟成が進むため、便利な使い方もある。