僅かな香りとフェロモン
人間の嗅覚と味覚を比較すると前者の方が断然に優れています。同じ分子量で比べた場合、味を感知するより香りを感じ取る能力の方が勝っているのは明らかなようです。とは言っても、やはり他の野生動物に比べると人間のそれは退化しているのも事実です。
主嗅上皮及び鋤鼻器官は鼻粘膜に見られる組織ですが、前者は匂い、後者はフェロモンを感知すると言われています。一般の動物ではこのうち鋤鼻器官の方が中心に機能しているようで、人間の場合どうやら進化の過程で退化してしまったようです。もはや消失してしまったものとさえ言われてきましたが、近年その遺伝子が見つかったようです。
ある実験では特定集団に加わった際、その集団の生理的反応に同調してしまったというい研究報告があります。これは集団特有の香りの存在を示唆しているものだとして注目されています。つまり、強い芳香は嗅覚上皮で感知し、薄い芳香は鋤鼻器官で感知するといったメカニズムが人間にも残っている可能性が指摘されている訳です。人間の脳でフェロモンとして本能的に反応させるには、ほとんど匂わなくなった香りを嗅ぐことによって、それが起こる可能性も示唆されています。