微生物・腸内細菌・ウェルシュ菌
腸内細菌は小腸に見られ、肌には常在菌が多く存在しています。人間の体の中には多くの微生物が生存しているため、簡単に言えば感染症になっているとも言えます。しかしながら、普通に治癒していく疾患の中にはこういった微生物によるものが結構あるものです。つまり、微生物によって疾患や健康への害悪に対して耐性を得る能力を借りてもいるということです。
ヘリコバクターピロリ菌は近年、胃潰瘍を発生させる要因で知られていますが、これは塩酸という過酷な環境下でも生存可能なためです。胃酸の中では自身の周囲だけを中和させてしまう変わった力を持っているためで、これによって胃潰瘍を招くとされます。しかし、塩酸によって傷つけられてしまう食道を保護する作用が当該菌に指摘されており、その結果として食道腺癌を抑制する効果が近年示唆されています。この癌は胃液が食道において逆流するためによって生じるもので、塩酸に暴露されたことが原因です。死に至るケースが多いとされる癌ですが、それが事実であれば、これも人間が微生物の力を借りていることになります。
腸内では善玉菌が糖を分解しています。これによって酸が生成されている訳ですが、実はある種の悪玉菌の悪さを抑える効果もあります。近年注目されているウェルシュ菌がこれに該当し、肉類を多く摂取する人に多く見られる菌です。この菌が増加してしまうと、免疫が弱ったり、下痢などを招くと言われていますが、腸内善玉菌は当該菌の増殖を抑制する働きがあると考えられています。つまり、微生物の力を借りて、疾患への抵抗を示していることになります。