抗生物質と微生物

ペニシリンはアオカビが生成する物質で、これはアレクサンダーフレミングと呼ばれる細菌の学者さんによって見つけられたものです。抗生物質はその後広く普及していくことになりますが、元来微生物が別の微生物を増殖させないようにそれを阻害する目的で産生されるものです。化学的に合成されたようなイメージを持ちますが、実は自然に生成されていたということです。作用は細菌増殖の代謝過程で行われるため、細菌に限定して毒性を呈することから人間の体に対してはあまり影響しないと考えられています。かつて欧州などでは疫病が蔓延したため、ペニシリンなどの抗生物質の出現によってそれまで行われてきた治療に比較すると飛躍的な進歩を遂げたと言うことが出来ます。 ただ、抗生物質が普及したことからその乱用によって多くの害悪も懸念されています。つまり、やたらに抗生物質を投与していると、これを無毒化して耐性を有する細菌が出現してしまいます。これは極度薬剤耐性菌や超多剤耐性菌といわれているもので、どの種類の薬を用いても効果を示さなくなったものです。 尚、ウイルスと異なって自身の細胞を有する細菌は、生存可能な温度と水分、栄養素があれば次々に増えていくことができます。しかし、その細胞を所有していないウイルスは細胞を持つ別の生体に移動しないと増殖することができません。これはウイルスが非常に単純な構造をしているためで、自分の力で増殖することができないのです。抗生物質は細胞へ働きかけることから、これを有しないウイルスに対しては効果が認められません。