抗生物質から乳癌?腸内細菌叢とアレルギー性疾患の関係
子供の頃に投与されていた抗生物質のせいで大人になってからアレルギーを引き起こしたとする症例があります。ある研究例では誕生後半年間抗生物質を与えた子供と、与えなかった子供を比較した場合、前者の方が数倍アレルギー性疾患を引き起こす確率が高かったとのことです。更に別の研究では、乳癌の発症リスクに関して調べた興味深いものがあります。こちらは、女性で抗生物質を良く使っている場合とそうでない場合を比較したもので、その結果は前者の方が乳癌の発症率が高かったそうです。この報告では抗生物質の利用率と死亡率は比例するとのことです。
これらの結果は、どうやら腸内細菌叢のバランスを崩壊させることに理由を求めることができます。というのは、通常、善玉や悪玉、日和見菌などはバランスよくその存在比率を維持しています。このため、例え悪玉や日和見が存在していても、健全であれば何も障害は起こりません。しかし、長期間に渡って抗生物質が用いられたり、その量が多すぎると、常在菌のバランスを崩すことになります。つまり、感染症を治療するために体内へ取り入れられた抗生物質は外敵となる細菌を消滅させても、同時に他の菌をも死滅させてしまいます。研究報告の続きでは、この腸内細菌叢のバランス崩壊から有害物質が体の中へ入り込みやすくなったり、増殖する癌細胞を抑えきれなくなるといった意見が述べられています。
悪玉菌の害悪では、その腐敗進行から発癌性物質を生成するというものがあります。このことが乳癌にも影響して便秘を認める女性にはその発症率が高くなっているとする報告があります。また、大腸癌に関する報告もあります。刺激性の高い胆汁を小腸で希釈する働きが善玉菌にあり、その後胆汁は大腸へと移動します。抗生物質の乱用から善玉菌が減少すると、この過程が消失するため、強い刺激を持ったまま胆汁は大腸へ移動してしまい、大腸癌の発症率を高めるとする指摘もあります。