河川を汚すとされるコメのトギ汁、実際は?
無洗米であればヌカが取り除かれていることから、コメの研ぎ汁も出ない。しかし普通のコメではそうはいかない。どこの家庭でも程度の差はあれ、とぎ汁が出ることであろう。
この研ぎ汁が河川を汚すのかと言われれば、YESである。これは川底にヘドロを蓄積させてしまったりするからである。本来とぎ汁には有機物が含まれている。炭水化物や脂質、タンパク質といったものがこれに該当する。これらは栄養素であり、魚介類や藻類にとって必要不可欠な物質だ。また、有機物は水中の微生物によって分解されるので、適度であれば水も綺麗になっていく。しかし有機物が増え過ぎると微生物も増えて、酸素の消費量が増える。こうなると酸素不足から魚介類などが減少する一方で、嫌気性微生物が増加し、アンモニアや硫化水素を発生させる。嫌気性微生物は酸素を不要とするため、どんどん増えることだろう。ヘドロはこういったプロセスを経て分解されなかった有機物によって形成されるのだ。
ここまで説明すると研ぎ汁がとてつもなく海や川を汚染するのではないかとも思われるが、実はそうでもない。一般家庭でよく問題となる環境汚染では、天ぷら油が知られているだろう。この油で研ぎ汁と同じ量のものを同じ真水で河川を浄化しようと思えば、研ぎ汁など比ではない。それほど油は河川を汚染するのだ。とはいえ、米を主食とする日本であるがゆえに、研ぎ汁も毎日出てくるので、量の問題もある。研ぎ汁が河川を汚すかどうかは、あくまで流される量、つまり程度の問題であろう。