胃潰瘍・EGF・ウロガストロン
胃の中では塩酸が分泌されていますが、これは消化液に含まれます。塩酸が肌に付着すると刺痛を招き、放っておくと蛋白質が白濁し、細胞は死に至ります。この塩酸が胃の中で分泌されても耐えられるのは、胃が非常に優れた構造を持っているからです。仮にこの構造が何某かの理由によって崩壊すると、胃は自身を塩酸で破壊してしまいます。この状態がいわゆる胃潰瘍です。
胃は細胞同士を結合させるコラーゲンなどでも補われており、胃そのものが大きくなっても容易に破れることはありません。また胃酸に晒されてもコラーゲン自体は簡単に壊されることはありません。しかし、胃潰瘍を招くとその部分の細胞からコラーゲンを分解する酵素が生成されます。潰瘍そのものの原因はヘリコバクターピロリ菌や特定の薬品などです。
胃潰瘍などによって損傷を受けた胃を回復させる増殖因子はいくつか知られています。この因子は修復が完了すると消失しますが、これは細胞増殖に歯止めがかからないと胃潰瘍から癌へと進展しかねないからです。尚、表皮細胞成長因子で知られるEGFは胃潰瘍が治っていく際に活動します。潰瘍部分で修復のために発生した細胞が作り出す物質ですが、これによって周りの細胞も活性化します。更に胃酸分泌を抑えるウロガストロンというタイプもEGFに含まれます。