腎臓と腎性高血圧

腎臓(じんぞう)における弊害は、腎臓内部の細い血管において動脈硬化が進んだケースです。腎臓は、老廃物を取り除くために、血液をろ過することで、尿を生成しています。腎臓内部の細い血管において動脈硬化が発生すると、腎臓本来の機能が阻害され、血流が悪くなります。その結果、腎臓が硬くなって萎縮する「腎硬化症」を引き起こすこともあります。この「腎硬化症」が進行すると、尿にタンパクが排泄されるようになります。そして、この「腎硬化症」が更に進行すると、腎機能が極度に低下する「腎不全」を発症します。腎不全は、血中の老廃物がほとんどろ過されないようになりますので、毒素が全身を再循環することで、尿毒症を発症することもあります。こうなると、人工的に血液をろ過するために、人工透析が必要になってきます。一度、人工透析が必要と判断されると、腎機能は、正常に回復することはないため、腎移植の手術を受ける場合を除いては、生涯、人工透析が必要になってきます。また、腎不全は、尿やナトリウムの排泄コントロールで体内の水分を一定に保つ働きを低下させます。このため、腎不全に陥ると高血圧は更に悪化します。つまり、高血圧は腎機能を悪化させ、腎機能の悪化は更に高血圧を悪化させることになり、ここに悪循環が発生します。腎臓に存在する糸球体は、毛細血管が集まった組織で、これが血液をろ過する作用を受け持っています。血圧が低下すると、この糸球体がそれを察知することで、腎臓からレニンというホルモンが分泌され、血圧を上げます。糸球体は、血圧が上がると簡単にその毛細血管が破壊されてしまうので、腎臓の細動脈が血流量の制限をします。しかしながら、高血圧が続くと、この細動脈にも細動脈硬化を発症させ、血管内部が狭くなります。狭くなると、血圧が高いのに、糸球体への血液量が常に不足するようになってきます。こうなると、腎臓は血圧が低下しているものと誤認識を行い、腎臓はレニンというホルモンを分泌させることで、血圧を上昇させようとします。その結果、動脈硬化が進行する上に、さらに血圧が上昇し、腎臓の誤認識で血圧上昇作用のあるレニンというホルモンを分泌するという悪循環が発生します。 腎性高血圧(じんせいこうけつあつ)は、大別すると、腎実質性高血圧と腎血管性高血圧があります。腎実質性高血圧は、腎盂腎炎、水腎症、痛風腎、のう胞腎、糖尿病性腎症、糸球体腎炎など、腎臓本体そのものによる疾患です。腎血管性高血圧は、腎動脈の狭窄によって発症するもので腎動脈硬化、腎梗塞、線維筋性異形成、大動脈炎症候群などがあります。腎性高血圧は、降圧剤などで治療しても、なかなか治癒しません。血圧を上昇させている腎臓本体の病気を先に治療することが大切になってきます。