鬱病とセロトニン、トリプトファンとの関係

アミノ酸の一種であるトリプトファンは、脳内においてセロトニンを生成します。トリプトファンは必須アミノ酸であるため、人間の体内では合成できない成分です。そのため食物として摂取する必要があります。トリプトファンを多く含む食品では肉や大豆といったものがありますが、大豆の場合、肉の半分程度しか含有されていません。最近話題となっている鬱病患者では脳内に存在するセロトニン量が不足していると言われています。セロトニンは神経伝達物質のひとつで、神経細胞から伝わった刺激を次の神経細胞へ伝える重要な役目を担っています。シナプスは神経の末端部分の空間のことを言いますが、神経刺激がこのシナプスへ接近すると、そこに存在するセロトニンがシナプスへ放たれます。セロトニンはその先にある次の神経の受容体に結合して、その刺激を伝え、神経末端に存在する輸送体によって再び元の場所に戻ります。その際、多くのセロトニンが壊れて失います。鬱病患者では、このセロトニンの量が少ないと考えられているため、最近ではこの輸送体による再吸収を阻害する薬が治療に使われています。これは再吸収させないことで、シナプス中に存在するセロトニン量を増やすことを目的にしたものです。輸送体は、細胞内へ物質を運搬する役目をもつ物質です。尚、セロトニンの量を実際に増やすには、必須アミノ酸であるトリプトファンが必要になってきます。また、このトリプトファンが脳内へ移動するのに輸送体が必要で、この輸送体は他のアミノ酸でも同じものを使います。その際、トリプトファンより他のアミノ酸が優先されますので、トリプトファンはなかなか脳内へ移動できません。ところがブドウ糖の摂取によって血中にインスリンが分泌されだすと、他のアミノ酸は細胞内へ吸収されてしまいますので、残ったトリプトファンがここで輸送体によって脳内へ移動していきます。